京都・仁和寺「木造・薬師如来座像」【国宝】
造立年
不明※弘法大師・空海の請来像
1103年(康和5年/平安時代後期)
大きさ
像高:10.7㎝
光背と台座を含めた像高:約24㎝
材質
白檀
国宝指定年月日
1990年(平成2年)6月29日
安置場所
仁和寺・御殿「霊明殿」
薬師如来座像の読み方
仁和寺の境内には読みにくい名前の仏像や堂舎が存在しますが、薬師如来座像は「やくしにょらいざぞう」と読みます。
薬師如来座像の歴史・由来
もとは仁和寺境内の北院に祭祀されていた仏像であり、北院の御本尊になります。
かつて北院に存在したとされる仏像は、かの弘法大師・空海が唐から持ち帰ったと伝わる仏像でしたが、残念ながら1001年(長保3年)に起こった原因不明の失火によって焼失し、その後、1103年に再び造立されています。
よって現在、見ることのできる薬師如来座像は1103年に造立された像になります。
この薬師如来座像は、通常は一般公開されることがない秘仏となることから、歴史上、初めて一般公開されたのは1986年(昭和61年)の学術調査の時になります。
仁和寺・北院とは?「北院の場所」
仁和寺北院とは、かつて仁和寺に存在した仁和寺の伽藍です。
かつて北院には本坊が存在したと伝えられ、近年における調査の結果、場所は現在の仁和寺境内西側に位置する「宇多野北ノ院町あたり」になるようです。
創建当初の仁和寺の伽藍の様相を知る資料が度重なる火災などで焼失し現存しないことから、現在に至るまで仁和寺の伽藍の面積や伽藍配置はいっさい不明と伝えられていますが、現在の敷地よりも遥かに広大な敷地を誇っていたことだけは明らかにされています。
薬師如来座像の作者
白河天皇の皇子であり、仁和寺第3世門跡でもある「覚行法親王(かくぎょう ほうしんのう)」が自らが本坊と定めた北院の本尊とするために発願し造像された仏像です。
作者は「円勢(えんせい)」とその息子であり弟子の「長円(ちようえん)」と呼ばれた仏師が造像にあたっています。
後に円勢の弟子たちは名前にすべて「円」を付けて名乗ったことから、後世で「円派仏師」と呼ばれるようになり、つまりは円派の始祖になります。
製作期間は1103年(康和五年)4月1日から5月4日までと伝わっています。
わずか24センチほどの小さな仏像ですが、1ヶ月という期間を擁して造像された事実をもってしも、この薬師如来座像の重要性と造像への意気込みような気迫を感じ取ることができます。
尚、台座部を除いた像高(10.7㎝)は「日本一小さい仏像」とも言われています。
薬師如来座像の特徴
仁和寺の薬師如来座像は香木の代表格である「白檀(びゃくだん)」を用いて素地仕上げ(透明のワックス)した檀像(だんぞう/香木を用いて造像された像)になります。
左手には薬師如来らしく左手の掌に薬壺を乗せ、右手は掌を正面に向けて全開に開いて「施無畏(せむい)」の印を組んでいます。
衣装は左右の肩を覆いかくし、向かい見て右肩を覆った布は足元までを覆いつくしています。
台座部は本像の着衣の一部が覆う宣字座(せんじざ)様式の台座となり、この台座からしても造立年を証明する証拠の1つとなります。
宣字座とは、名前の通り「宣」の漢字のような形状の台座をしていることからこの名前が付され、日本史上における仏座としては最古の様式の仏座になります。
ちなみに上述した日光・月光菩薩立像の背面には後屏(こうびょう)が設けられ、ここにも見事なまでの繊細な唐草模様の彫刻(宝相華唐草)が彫られています。
薬師如来座像の造立方法
薬師如来座像の造立方法は一材から切り出した「一木造り」で造像されています。
像内は底部から躰部に至るまで内刳りが施されていますが、着衣の一部と白毫(びゃくごう)部、左手の薬壺は別材で造立されています。
薬師如来座像が国宝指定を受ける最大の理由
平安期に造立されたとされる仏像でも国宝指定までは至らずに重要文化財指定の仏像もあります。
しかし、本像は国宝指定を受けています。
この薬師如来座像が国宝指定を受ける最大の理由としては、まず小さいと言うこともあり、持ち運びが容易であり、管理もしやすかったことから保存状態が極めて良好に保てたことが挙げられます。
保存状態に関しては、着衣をよく見れば分かりますが造立当初の彩色が残り、極めて保存状態が良好であったことを証明しています。
頭部の光背には七仏薬師、背面光背には脇侍として日光・月光菩薩立像、台座部には十二神将の繊細な彫刻が半肉彫りで彫られ、同じく造立当初の彩色を残しています。
現存する薬師如来座像としては国内屈指と言えます。
薬師如来座像の御朱印
仁和寺では現在7種類の御朱印を授与することができますが、その中にこの国宝・薬師如来座像にちなんだ「薬師如来」の期間限定の御朱印を授かることができます。
中央に「薬師如来」と墨書きされた御朱印になります。
授与場所は境内の2ヶ所(御殿入り口・中門の奥)の授与所でいただくことができます。
値段は300円です。
授与場所や授与可能時間、御朱印の値段については当サイトの以下の別ページにてご紹介しています。
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薬師如来座像の特別一般公開について
仁和寺の薬師如来座像は仁和寺においては秘仏にあたりますので、通常は拝観することができません。
ただし、不定期で一般に特別公開されることがあります。
公開時期や公開される場所はその時によって変わりますが、基本的に仁和寺で一般公開されることはなく、例えば京都国立博物館や東京国立博物館などで公開されます。
例を挙げれば、2018年(平成30年)1月16日から3月11日に東京国立博物館で特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」という展示会が開催される予定で、この時に一般公開されます。
薬師如来座像の安置場所
仁和寺の薬師如来は普段は霊明殿に安置されています。
霊明殿は御殿の中にあり通常時は拝観不可となります。
ただし、扉の隙間が少し開いている時は中を見ることができ、遠目からですが薬師如来坐像を拝することができます。
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